こんにちは。鉄人blogに訪れていただきありがとうございます。10月7日(火)~11日(土)の日程で、福岡県で開催された第87回全日本ベテランテニス選手権大会に出場してきました。
昨年の本大会で3度目の挑戦で初めて頂点に立ち、今年はディフェンディングチャンピオンとして臨む大会となりました。昨年は第2シードでしたが、今年は第1シードでの出場となり、過去2回負けた全日本も第1シードでの出場でしたので、第1シードで優勝するということで言えば、昨年とは違った意味での難しさもあると感じていました。
また、今大会はドローイングも大きなカギを握っていると感じていました。32ドローのうち8人がシード選手となり、あとは予選勝ち上がり選手も含めフリーで抽選が行われますが、実力的には明らかに上位に入ってくる数人の選手が、ポイントの関係でノーシードまたは予選からの出場となっていました。
1か月ほど前に組み合わせが決まり、本戦の前日に予選勝者も含め、正式なドローが発表されました。ドキドキしながら確認しましたが、幸いノーシードの実力選手と早いラウンドで当たることはなく、徐々に調子を上げていく私にとってトーナメントを勝ち上がるうえでは、比較的組みやすいドローであると感じました。
ただ、相手のレベルや実績に関係なく、やるべき準備は全く変わりませんので、いつも通りしっかり調整し、大会に臨みました。今年も昨年と同様に大会前日の夜から当日の朝にかけて神戸から福岡にフェリーで移動し、当日の朝の試合に臨みました。
結果
※日本テニス協会のHPにおいても氏名・結果等が公表されていますので、本ブログにおいてもお名前を掲載させていただきます。
1 回 戦 6-3 6-0 大塚 啓太(登戸サンライズテニスコート)
2 回 戦 6-0 6-2 上田 威(クアドリフォリオ)
準々決勝 6-3 6-1 下村 貴史(湘南ローンテニスクラブ)
準 決 勝 6-1 6-3 中島 伸吾 (タカミ)
決 勝 7-6(4) 1-0ret 山岸 徹郎(SEEKERs TENNIS TEAM)
※2年連続2回目
結果は昨年に続いての優勝で2連覇を達成することができました。決勝戦を含め全てストレート勝ちでしたが、自分の中では圧倒的に勝ちきったというよりは、何とか凌いでうまくペースを掴んで、逃げ切ったというゲームが多く、優勝という結果については100点満点ではあるものの、内容的には65点くらいであったという印象です。そのあたりを含め、振り返っていきたいと思います。
〇大会に向けて
9月中旬からの日本スポーツマスターズ、姫路市民大会と全日本ベテラン前にほぼ毎週のように試合をこなすことができていましたので、試合勘という部分では全く問題ありませんでした。
また、昨年は初めての福岡での試合ということもあり、いつもと違った緊張感や堅さがプレーにも出ていましたが、今年は昨年の経験がインストールされていましたので、そういった不安もなくコートに入ることができました。
〇基本戦術について
全日本ベテランは、言わずもがな「日本一を決める一発勝負の大会」という位置づけもあり、他の大会と違った緊張感があるのも事実で、いつもの大会に以上に丁寧に入っていこうと考えました。
ただ、丁寧と言えば聞こえがいいかもしれませんが、これが「安定したテニス」なのか「守備的な相手任せのテニス」なのかでは大きな違いがあります。第1シードとして勝つことを当然のように求められる私と、「負けてもともと第1シードに思いっきりぶつかっていこう」と考える対戦相手とは精神面でも大きな違いがあります。
そこで考えていた基本戦術が
①ゲームの前半は、クロスラリー中心でリズムを作れるよう長いラリーをする。
②サーブの確率を高くする。
③しっかり打つ時(攻撃)としっかりつなぐ時(守備)の判断を都度適切に行う。
〇戦況(1回戦~決勝)
1回戦は、初戦ということもありペースをつかんでいくまでに少し時間がかかったと印象でした。
序盤で相手のサービスゲームを2ゲーム取って4-1とリードしましたが、自身のミスもあってブレークバックされ、4-3となり、第8ゲームの1ポイント目も自身の簡単なミスでポイントを失い、その時点が、この試合で1番精神的に追い詰められた状況になりました。
ここで考えたことは、焦りもありましたが、「とにかく我慢強く、アンフォースとエラーを減らしていこう」ということを考えて割り切ってプレーしました。
その甲斐あって、何とかキープし、5-3とし、精神的にかなり楽な状況になりました。そこからはしっかりとゲームのリズムを掴んで1ゲームも失うことなく、勝利できました。リズムを掴む前と後では、プレーの質も含め、全く違う展開となり、次戦ではできるだけ早くペースを掴んでいくことが課題であると認識しました。
2回戦は、最初のゲームからより高い集中力で試合に入っていこうということを考え、攻撃的なテニスを展開し、6-0、4-0まで10ゲーム連取し、完全に試合の流れを掴みました。特に2セットは4-0の15―0まで1ポイントも落とすことなく、完全にゾーン状態でした。
このような状態であればあと2ゲームも同じようにプレーすればそのまま最後までいけたのでしょうが、「このままいけば1ポイントも落とさずこの試合を終わらせられる」と余計なことを考えた瞬間、集中力が途切れ簡単なミスが続き、第5ゲームをブレークされると続く第6ゲームもキープされ、4-2となり、これまでとは全く違ったゲーム展開となりました。
ここで踏ん張って5-2としたことで、最終的に6-2でゲームを締められましたが、最後の4ゲームは前半のゲーム展開からは考えられないほど精神的にも負荷がかかった状態になりました。
前半がもたついて後半にしっかり流れを掴んだ1回戦とは全く逆の展開となったわけですが、改めて最初から最後まで同じペースでゲームを進める難しさを感じさせられる試合となりました。
3回戦の相手は、2回戦と同じくサウスポーで、1球1球に力もあり、全てのショットを卒なくこなせる選手でした。初めて対戦することもあり、前半はサーブやストロークのリズムに多少戸惑いながらもクロス中心に力強くラリーすることを考えてプレーし、徐々にリズムを掴むことができました。
1セットの前半は競り合った展開になりましたが、要所を締められて6-3、そして2セット目は前半からリードを奪い6-1で取って勝利しました。
失ゲーム数は昨日の倍の4ゲームでしたが、ゲーム全体を通して、1.2回戦のように精神的な緊張感が高まる場面もなく、落ち着いてゲームを進められました。
安定したゲーム展開というのは、失ゲーム数だけの問題ではなく、ある程度、試合展開の見通しをもって進められるかどうかで決まると感じました。
SFの相手は同い年で大学生の時からの友人である中島選手でした。彼とは今年、私が出場したJOP大会(大毎オープン、関西オープン)の準決勝で2回対戦していて今回で3回目となり、手の内は知り尽くしていますので、やることは明確でした。
私としては、これまでの対戦した時と同じように、力強いボールを左右に散らしていきながらミスをさせたり、積極的にネットプレーに出たりして勝負しようと考えていました。
今大会のここまでの勝ち上がりを見ても中島選手は私よりも倍以上の時間を要していたことに加え、ダブルスも出場しているため体力的には私にかなり部があることも分かっていましたので、焦らずじっくりプレーしようとも考えていました。
1セットは体力的なコンディションの差があったのか、前半から中島選手のミスがいつもよりも多く、
比較的簡単に6-1で先取し、私にとって非常に理想的な展開で進みました。
ただ、1セットは私のプレーが良かったというよりも中島選手のミスでポイントが取れていたという印象でしたし、セットが変わることで流れもリセットされることが多いので、このままではいかないだろうということは考えていました。
案の定、2セットは1セットとは違う展開となりましたが、その理由は中島選手のプレーの質が劇的に良くなったというよりは、私自身のメンタル的な部分が影響していました。
このような心理状態は2回戦の2セット後半でも同じように感じたことなのですが、圧倒的に有利な形でゲームが流れていくと、その展開が自分の中でのベース(普通の状態)となってしまい、少しポイントを取られたり、競り合ったゲーム展開になったりしただけで、流れが大きく変わった、相手に勢いが出てきた、などと必要以上に意識してしまい、自分自身でゲームを難しくしてしまうということがあります。
2セット1ゲーム目は相手のサービスゲームで、ニューボールからのスタートでした。通常であれば、相手サーブのニューボールスタートなので、取られて元々で第2ゲームからの自身のサービスゲームから取っていけばいいと気楽に考えられればいいのですが、1セットが6-1と簡単に取っていたこともあり、このゲームも取らなければいけないと感じ、いつも以上にプレッシャーがかかっていました。
1ゲーム目をキープされると、たった1ゲームの相手のキープが非常に重たく感じられ、2ゲーム目の自身のサービスゲームに1セット目では考えられないような緊張を感じてしまいました。
40-15とリードするも自分自身で作り出した嫌な緊張感に負け、ミスを連発してしまい、ブレークされ0-2となりました。こういう状況になって、40-15から取れなかった2ゲーム目のことやこのゲームをキープされると0-3になって非常に難しくなること(実際は1ブレークダウンなだけなのですが)など過去や未来のことに意識が向いてしまい、今ここのプレーに集中できない状態になりました。
SFはこの3ゲーム目がターニングポイントでした。私のプレーは委縮し、逆に相手は勢いを増し、形勢が傾きそうな状況でした。
この時は「もしこのゲームを取られても、そして万が一このセットを取られてもファイナルセットで必ず勝ち切ることができるから思い切ってプレーしよう」と自分自身を励ましつつ、とにかく相手コートにボールを返球することだけを考える泥臭いテニスを徹底しました。
この割り切った戦術が功を奏したのがこのゲームを何とかブレークし、1-2となると少しだけ落ち着きを取り戻した自分に戻っていることに気づきました。
第4ゲーム以降は再びリズムを取り戻すと4ゲームを連取し、最終的にこのセットを6-3で取って勝利しました。
6-1,6-3というスコアだけ見ると簡単なゲームのように思えますが、同じようなスコアであった3回戦の6-3,6-1とは全く違う精神状態でした。「いい内容ではなかったがなんとか勝ち切った。」これがSFを終えた後の率直な感想でした。
決勝の相手は第6シードの山岸選手でした。彼との対戦は2年前の関西オープンの準決勝(その時は6-1、6-2で勝利)以来でした。パワフルなストロークが持ち味で、ベースライン後方からでもエースが取れる強力なストローカーです。
しかも強みはストロークだけでなく、今大会のダブルスでも優勝経験があるように(今年も優勝)サーブ、ネットプレーなども高いレベルの技術があり、純粋にボールを捉える技術は私よりもずっと上でした。
ただ、膝の手術を行った影響もあり、フットワークや守備力にはやや不安があり、そこは十分付け入る隙があると考えていました。
しかも、彼もここまでの勝ち上がりでシングルスもダブルスもかなりの時間を要しており、体力的にも不安を抱えていることが傍から見ても明白で、おそらく最初からエンジン全開で来ることも予想できていました。
試合が始まって予想通り、最初から山岸選手がかなりの圧をかけてきていました。私もそれは想定内でしたが、予想以上に彼のプレーの質が高く、前半はかなり守勢に回されていました。
ゲーム全体としては「攻」の山岸選手「守」の私という構図ではありましたが、前半はほぼ一方的な展開で2ブレークダウンの0-4まで全く付け入る隙がありませんでした。
ここで私が考えていたことは「このプレーが最後まで続くことはない。1球でも多くボールを打たせて体力を消耗させよう。」ということで意外と冷静にゲームを分析できていました。
また、この時点である程度1セットは諦めて2セット目以降をどうプレーしていこうかということも考えていましたので、精神的な焦りはほとんどありませんでした。
第5ゲームもブレークポイントを握られましたが、何とかキープし1-4とできたことで少し流れが変わったことを感じました。
そして第6ゲームで初めてブレークし、2-4とし、1セットの展開も少し混沌とした状態となってきました。
しかし、第7ゲームで再び山岸選手が盛り返し、ブレークバックされ、第8ゲームの山岸選手のサービスゲームで40-15とセットポイントを握られました。
ゲーム展開を考えると苦しい状況でしたが、ここでは完全に2セットに気持ちを切り替えられていて、セットを取られてしまうというネガティブな心の状態よりも、「相手の一方的な展開から2ゲームを取り返した」というポジティブな心の状態の方が勝っていました。
「とにかく1球でも多く相手に打たせよう。」
「最後まで諦めずにプレーしよう。」
ただ、それだけを考えてプレーした結果、山岸選手のダブルフォルトもあり、このゲームをブレークするとその流れで第9ゲームもキープし、4-5となり、絶体絶命の状況から後1ゲーム差となりました。
しかも、第9ゲームを終えたあたりから山岸選手の体の状態が目に見えて悪くなり、コートチェンジの際にトレーナーを要請していました。
4-5とリードされているものの明らかに形勢が入れ替わった状況ではありますが、ここで考えるべき大切な考え方は「相手の状況に関係なくいいリズムのプレーを続ける」ということです。
というのも山岸選手は準々決勝、準決勝においてもかなり体の状態が悪そうでしたが、最終的には持ち直して勝ち切っていました。
その試合を見ていて感じていたことは山岸選手の対戦相手が「山岸選手の体の状態に合わせて自身のプレーの質を下げてしまっていた」ということでした。
もちろん山岸選手が、体が悪いフリをしてこちらを油断させようとしているわけではありませんが、「体の状態が悪い≠試合を諦めた」では決してありません。
また得てしてそういう時はプレーに迷いがなくなり、状態が悪くなる前よりもプレーの質が向上することさえあります。
このことを理解していたため、第10ゲームにおいても相手任せのプレーではなく、より泥臭くそしてより攻撃的にプレーすることを心掛けました。
第10ゲームをブレークし、第11ゲームもキープし、6-5となりこの試合、初めてリードを奪いました。
コートチェンジでトレーナーが到着し、山岸選手の治療が始まり、メディカルタイムアウトとなりました。いい流れの時に数分間の間が空くことは正直嫌なものですが、昨年のこの大会の決勝戦でもファイナルセットの4-3リードの場面で同じ経験をしており、精神的に動揺することもなく、淡々と次のゲームの準備に集中していました。
第12ゲームは山岸選手のプレーに切れが戻り、キープされ6-6のタイブレークになりました。
ここで考えるべきことは「12ゲーム目を取れなかった。」ということではなく「より長くプレーさせることができる。」とポジティブに考えることです。
タイブレークも2-0から4ポイントを連取され一時は2-4とリードされましたが、そこから5ポイントを連取し、7-6(4)でファーストセットを先取しました。
山岸選手側からこの状況を捉えるとセットポイントまで握った圧倒的有利だった1セットを落とし、かつ自身の体の状態も芳しくない。ここから勝つためにはあと2セット取り返さないといけない。相手はフィジカル的にもメンタル的にも充実している。この状況をどのように打開するか分からない。
というような状態ではなかったかと思います。私は最悪タイブレークを落としたとしても2セット3セットで取り返すことは十分できると考えてプレーしていましたので、タイブレークを取れたことは、メンタル的にも非常にポジティブでした。
また、それとは対極にいる山岸選手のメンタル状態も理解していたので、2セット目はさらにプレーの質を上げて山岸選手のメンタルを削っていこうと考えていました。
2セット目のファーストゲームは山岸選手のサーブから始まりましたが、1セット目のような勢いはなく、簡単にブレークしました。
このゲームで山岸選手の心が完全に折れたなと感じましたが、案の定、山岸選手が主審にリタイヤを申し出て試合が終了しました。
昨年とは違い、相手選手の途中棄権という幕切れとはなりましたが、昨年とは違った喜びや安堵感が今回の優勝にはありました。
〇大会全体を振り返って
試合終了後に山岸選手に「体は大丈夫?」と声をかけました。山岸選手は「大丈夫だったら勝ってますよ!」と負けず嫌いの彼らしい言葉がありましたが、その後に「でも大﨑さんは他の選手と違って心が折れない。あの状況(0-4、2-5)であれば普通の選手ならそのままいけるのに、大﨑さんには踏ん張られてしまった。」と言ってもらえました。
その言葉は私にとって最大級の賛辞であると感じました。なぜなら「折れない強い心(絶対あきらめないこと)」は私自身が一番大切にしていることで、日々の積み重ねをしてきた者にしか身につかない能力だと考えているからです。
結局はその差が勝敗を分ける。それを感じさせてくれた決勝戦になりました。
今大会を振り返って感じたこと
- 大会前、大会期間中のコンディション調整が非常にうまくいったこと
- トーナメントを勝ち上がるためにはフィジカルのコンディションが非常に重要であること
- 試合の中で自分の強み(メンタル、守備力)を遺憾なく発揮できたこと
- 試合展開で感じる苦楽はその時のスコアではなく、その状況を捉える自身の精神状態であること
- 満身創痍の選手が多い中で自身のフィジカルの状態は群を抜いていたこと
- 守備的な展開が多く、全体的にはスコア以上に苦しい試合が多かったこと
先にも書きましたが、結果はともかく内容はまだまだと感じるところも多く、テニスの奥深さや難しさを同時に感じさせられました。
今は2連覇を達成したという満足感を味わいながら3連覇に向けて何が必要なのかということを考えながら練習を再開しています。
今大会では学んだことをこれからの自身のレベルアップにつなげていきたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします!
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