こんにちは。鉄人blogに訪れていただきありがとうございます。前回は試合の中で「リズムをつかむ」ことについて話をしましたが、今回は試合の中での「自分自身との関わり方」という話題で進めていきたいと思います。
前回はゲーム全体を通したプランニングや技術的要素などある程度外から見て分かりやすい「外観的要素」の話が中心だったと思いますが、今回は試合の中での自分自身との関わり方という「内観的要素」の話となります。
まず、「インナーゲーム」という書籍はご存じでしょうか。これは、テニスコーチのティモシー・ガルウェイが、レッスンを通して考案し、1974年に著作 “The Inner Game of Tennis” の中で発表した考え方になります。
ガルウェイは、心の中のインナーゲームに勝つことが、アウターゲーム(実際の勝負)に勝つための近道であるとしています。
つまり、自分自身との関わりをうまくすることで、いい内容のゲームが出来たり、試合に勝てたりすることができるようになるといったことになります。
インナーゲームの中では「セルフ1」と「セルフ2」という概念があって、「セルフ1」とは自分自身の中にある意識や思考で、「セルフ2」とは無意識や身体とされ、成果を出すためには「セルフ2」をより強化し、「セルフ1」のブレーキを最小限にする、これがインナーゲームの考え方です。
「セルフ1」と「セルフ2」の関係は騎手と競走馬の関係に例えられることがあります。どれだけ競走馬の能力が高くても騎手が過度にコントロールしすぎるとその馬は能力を発揮できずアウターゲーム(勝負)に勝つことが難しくなります。
私も試合中(練習中も)自分自身の中にある「セルフ1」と「セルフ2」の存在を強く意識していて、「セルフ1」を最小限かつ適切に介入し、「セルフ2」の能力が最大限に発揮できるようにうまくコントロールしています。
それでは「セルフ2」が能力を発揮できない場合と発揮できる場合の「セルフ1」の試合中の実際の関わりを具体的に考えていきます。
〇「セルフ2」が能力を発揮できない「セルフ1」の関わり方
・結果に対してのみに評価する言葉かけをする
→「何やってんだよ!」「何で入らへんねん!」「へたくそ!」「ボケ!」
・技術的要素について複雑に考える
→「もう少しテークバックの時ラケット面を上に向けて・・」「グリップをもう少し厚めに握って前方向にしっかり振りだして・・」
・過去(終わってしまったポイント)や未来(これからのポイント)について否定的に考える
→「さっきのポイントを取っていたらゲームを取れていたのに・・」「このゲーム取られたらもう勝てないかも・・」「今のショット入っていたんじゃない?」
・勝負に対するこだわりを全くもたない言動をする
→「別に負けてもいいし・・」「もう適当にプレーしよう」「こんな相手に勝てるわけない・・」
〇「セルフ2」が能力を発揮できる「セルフ1」の関わり方
・結果ではなく内容に対して評価する言葉かけをする
→「ナイストライ!」「よく打ち切った!」「オッケーオッケー!このペースでいこう」
・技術的な要素はシンプルに考える
→「もう少し引きつけて打とう」「少しポジションを下げよう」「体勢が浮かないように重心を下げて打とう」
・戦況を考える
→「今は相手の流れなので我慢してついていこう」「チャンスがあったらどんどん前にいこう」「ここはしっかりファーストサーブを入れてラリーをしていこう」
・自分自身を励まし続ける(褒める)→
「まずは一本返そう」「このゲームしっかり頑張ろう」「ナイスゲーム!よく頑張った!(取っても取られても)」
こう見てみると「セルフ1」と「セルフ2」の関係は指導者と選手の関係に似ています。どちらの関わりが、いい結果を出せるかは一目瞭然であり、言及の必要もありませんが、得てして本番で結果を出せない選手の言動を見ていると、セルフ2が能力を発揮できない関わり(言動)を取っていることが多いように思います。
なお、「セルフ2」が究極に能力を発揮できる状態は「セルフ1」の関わりがなくても自然に体が動いてベストパフォーマンスを発揮できることでこれは俗に「ゾーンに入った」ということになります。
ただ、このように完全にゾーンに入ることは、世界のトッププロであっても非常に困難で、競技生活においても数回程度あるかないかといわれています。
そのため、現実的には適切な「セルフ1」の介入によって「セルフ2」の能力を最大限発揮できる状態を作っていくことが大切であると考えています。
ちなみに「セルフ2」が能力を発揮できる「セルフ1」の関わり方で紹介した例は私が先日の試合中に実際に行っていたことになり、接戦の試合を勝ち切れた大きな要因であったと考えています。
最後にどのようにすれば「セルフ2」の能力を最大限発揮できるようになるのかについてですが、これは「訓練」し続けるしかないと思っています。
ショットの上達などの技術の向上には、練習が必須ですが、それはメンタル面に関しても全く同様です。
練習でできない(やろうとしない)ことが試合でできるようになるわけがありません。
談笑しながらいつもリラックスして練習している人が緊張感のある試合で力を発揮できるとは思いませんし、練習を本番と思って全力を出し切らない人が試合で全力を出し切ることはできません。
私が「あなたの強みは何ですか?」と問われた時にいつも「自分自身の強みはメンタルです」と自信をもって言い切れるのは、練習であっても試合であっても同じテンションでいつも「全力を尽くしている」から他なりません。
練習中においても「セルフ1」と「セルフ2」の存在を意識して取り組むことで、少しずつ試合の中での落ち着きや勝負強さが培われていきますので、粘り強く続けてください!
最後までご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします!
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