こんにちは。鉄人blogに訪れていただきありがとうございます。今回は大会レビュー編PART3として決勝戦を振り返っていきたいと思います。
ファイナルセットの激闘を演じた決勝戦から2週間以上経ちましたが、局面局面においては未だに鮮明に記憶に残っています。それほど、自分にとっては強烈に印象が残った試合になりました。
また、試合中の微妙な心の動きがゲーム内容に大きく影響したことも強く感じましたので、そのあたりも含め、ゲームを振り返っていきたいと思います。
〇決戦前夜(決勝戦に向けて)
自身の準決勝や他の試合の観戦を終えた後は、会場の近くの温泉施設で、温冷交代浴やサウナなどでしっかりリカバリーをして、ホテルに戻りました。
リカバリーを行う目的は、疲れた体を癒すということももちろんありますが、それ以上に試合で交感神経が優位になっている自律神経を副交感神経優位にさせ、リラックスモードに入るということの方が大きいです。
神経が高ぶったままだと、心身の疲れがしっかりとれませんし、寝つきも悪くなります。明日の決戦に向けて否応なしに、そういった状態になりますが、意図的にリラックス状態を作るということも、勝ち続けるうえで大切な技術です。
私はいつも次の試合の準備は、前の試合が終わった瞬間から始めるようにしています。
ホテルに戻ってからは準決勝の振り返りと明日の試合の戦術の確認、用具の準備、夕食などを済ませて、あとは、読書などゆっくりした時間を過ごして22時前には就寝しました。
〇起床~会場へ
5時半に起床し、身支度や散歩などを済ませ、6時半過ぎには朝食を取りました。体の疲れもなく、食欲もそれなりにあって、いい状態で試合に臨めると感じました。
試合開始は10時でしたので、1時間半前の8時半に到着できるように出発しました。高ぶる気持ちを抑えつつも、試合のこともある程度イメージしながら会場へ向かいました。
〇会場到着~試合まで
予定通り会場に到着し、誰もいない選手の待合室でゆっくり深呼吸しながら、試合までの約1時間半の過ごし方について確認を行いました。
具体的には、エントリー、準備運動(ランニング、ストレッチ等)、オンコートでの練習、着替え等、戦術の再確認、準備物の最終確認、そして決戦のコートへといった流れです。
〇決勝の戦術について
①相手のゆっくりとしたストロークのペースに合わせることなく、基本的に早いテンポで攻撃していくことを意識する。
②後ろで打ち合ってポイントを取るのではなく、積極的にネットを取ってポイントを取っていく。
③相手の低いスライスに対しては、力んで引っかけないように、引きつけて深いボールを返球する
④劣勢になったとしても、状況を冷静に分析し、最後まで諦めずプレーする。
⑤長い試合を想定し、水分補給や漢方などの摂取をして万全の痙攣対策を行う。
勝つために以上のような戦術を考えて試合に臨みました。対戦相手の弓田選手は全日本ベテランを2連覇している経験も実績もある同年代最強の選手です。
彼のプレーを支えているのが、抜群の安定感を誇るストロークとフットワークそして強靭な体力とメンタルの強さにあります。
今年度のJOP大会でも毎日オープンの決勝でローランド・ルエル選手にファイナルセットで負けているだけで、今年から45歳に上がってきた昨年の40歳の部の全日本チャンプである向選手や元全日本チャンプの山岸選手にも連勝していて、彼らのストローク力を持っても、弓田選手の鉄壁の守備力を崩せなかったことになります。
私も自身のストロークやフットワークには自信はあるのですが、彼の守備力を打ち破れるほどのパワーやスピードはなく、また、後ろでの粘り合いでも確実に勝っているとも思えませんでした。
昨日の山岸選手との準決勝を見ていても、山岸選手の明らかに有利なストローク戦でも球際のところでしっかり粘り強く返球し、最終的にはミスをさせている展開を多く目にしていました。
その試合見ていて、やはり弓田選手のストロークを打ち破るには、ストロークで押し込んで、ネットプレーで仕留めるしかないと感じていましたので、基本戦術として「ネットに積極的にトライする」ということは、強く意識して試合に入りました。
〇ファーストセット
「泣いても笑ってもラスト1試合。悔いのないように全力を尽くそう!」そう自分に言い聞かせて、コートに入りました。
いつも通り、平常心で臨もうと考えていましたが、初めての決勝の舞台で、想像以上に緊張していたようです。
相手のサービスゲームから始まった試合は、緊張感もあって私のリターンミスが重なりラブゲームでキープされ、第2ゲームの私のサービスゲームに移りました。
最初の2ポイントは戦術通り、早いテンポで攻撃を仕掛け、いい形で取れましたが、そのあと、先にゲームポイントを握るものの、粘り強いストロークにミスが続いて、ブレークされ、0-2となりました。
2ゲームを連取されたものの、ラケットがしっかり振れてきたこと、「ネットに積極的にトライする」という基本戦術がある程度うまくいっていたことなど、巻き返せる感覚を持ちながら相手サーブの3ゲーム目に入りました。
案の定、第3ゲームの相手のサービスゲームはいいリターンからいい攻撃ができて、簡単にブレークし、第4ゲームの自身のサービスゲームも同じような流れでキープし、2-2となりました。
前半の4ゲームをイーブンで折り返せたことは、中盤から後半に引き離すことが多い、私のゲームパターンから考えるといい流れでした。このままペースで中盤からも積極的に攻撃を仕掛けていこうと第5ゲームに入りました。
通常の相手であれば、ここからは完全に私の流れでゲームを持っていけるのですが、やはり弓田選手は簡単にはそうさせてくれませんでした。
第5ゲームもストロークで主導権を握り、先にネットに出ていく展開を多く取りましたが、決めるべきボレーでミスが出たことで、微妙に流れが変わり、このゲームをキープされると、第6ゲーム、第7ゲームも長いデュースの末、チャンスがありながらも取り切れず、2ゲームを連取され、2-5となりました。
この3ゲームを取られた要因は私の中で「このペースでいけたら、大丈夫だ。」と思ったことよるほんの少しの緊張感の緩みが、ミスに繋がり、そのミスによりプレー全体の重心がやや後ろに落ち着いてしまったことで、弓田選手に余裕をもってストロークをさせてしまったことにありました。
2-5となった時点で、ゲームの流れから考えてもこのセットで逆転を狙って、パワーを出していくよりも、ある程度セカンドセットに気持ちを切り替え、流れを変えていく方が得策であると考えました。
とは言っても、第8ゲームをブレークされてしまうと、第2セットも第1セットと同じように相手サーブのしかもニューボールからのスタートとなってしまい、流れを変えることが難しいとも感じました。
そのため、第8ゲームだけはなんとかキープし、第9ゲームでブレークできなくても第2セットは自身のサービスゲームから始められる展開を作ろうと考えてサービスゲームに入りました。
第8ゲームも悪い流れの中でのゲーム展開でしたが、なんとかキープに成功し、3-5となりました。第9ゲームの相手のサービスゲームでは、先にセットポイントを握られるものの粘りを見せてブレークバックのチャンスを掴みましたが、最終的には、キープされ、3-6で第1セットを先取されました。
〇セカンドセット
先にセットを取られたことは、状況としてはポジティブではありませんでしたが、第1セット後半からある程度、そのような状況を想定しながらゲームを進めていましたので、気持ちが後ろ向きになることはありませんでした。
このように考えられたことで、第1ゲームのサービスゲームに入る前には、何となくいい流れでいけるのではないかとの予感がありましたが、その通りラブゲームでキープし、いい流れを作ることができました。
第2ゲームの相手のサービスゲームでもそのままの流れでブレークに成功し、第3ゲームの自身のサービスゲームとなりました。「このゲームをキープできれば完全にこのセットは自分の流れになる。この流れのままいこう。」と考えました。
目の前のゲームに集中して2ゲームを取って、少し余裕が出たことによりこのような考えが浮かんできたことで、また微妙に混沌とした流れになっていきました。第3ゲームは、これまでの2ゲームのように簡単いかず、我慢を強いられるラリーが続きました。
そして何回か続いたデュースの後の相手のブレークポイントで、相手のバックハンドへの鋭いアプローチに対して、私が上げた苦し紛れのロブがサービスライン手前の浅いところに返ってしまい、弓田選手がスマッシュの構えを作りました。
「このゲームはブレークされた。」と思った瞬間、あろうことか弓田選手の打ったスマッシュが僅かにベースラインを超えました。このラッキーなポイントを活かし、何とか第3ゲームをキープし、3-0となりました。
やっとの思いでキープしたことで、メンタルパワーが一時的に落ち込んで、第4ゲームは、ラブゲームでキープされ、またすぐに私のサービスゲームが回ってきました。
この第5ゲームが第2セットにおけるお互いにとってのターニングゲームとなりました。私にとっては4-1としてリードを広げたい。弓田選手にとっては2-3としてイーブンに戻したい。
それは単なるゲーム「差」だけでの問題ではなく、このセットの「流れ」を決めてしまうゲームでもありました。
この重要な第5ゲームはこのセットで最も長いゲームとなり、私は積極的に前に、弓田選手はベースライン後方から深く重いストロークを展開し、お互いの持ち味を出したゲームとなりました。
何度もゲームポイントとブレークポイントが行き来するゲーム展開となりましたが、最後は私のボレーが決まってこのセットの要と言えるゲームをキープし、4-1となりました。
十中八九取られていた第3ゲーム、そしてこのセットの要の第5ゲームをキープしたことで、完全にゲームの流れを掴むことができました。
第6ゲームはその流れに乗ってブレークすると、第7ゲームの自身のサービスゲームは簡単にキープし、第2セットを6-1で取ってセットオールとなりました。
〇ファイナルセット
ファイナルセットは弓田選手からのサービスゲームでしたが、受け身になることなく、積極的に攻めていこうと考えました。
セットチェンジのニューボールでしたので、通常よりもベースラインの後方に位置取りし、リターンからボールに弾かれないようにしっかり前にフォロースルーしていくことを考えました。
第1ゲームは、考えていた通り、しっかりリターンを返球できたことで、3球目のボールを相手のバックハンドめがけて強いスピンボールを配球することができ、ポイントを重ねブレークに成功しました。
この試合で始めて一歩リードした形となり、しかも第1セット後半から連続してキープしている自身のサービスゲームとなりました。ここである考えが頭をよぎりました。
「このままの流れでいけば、ファイナルセットも優位にゲームを進められる。」
こう考えられた状況は、心理的にポジティブになり、それが良いプレーにつながるということは私の経験上もよくありました。
ただ、今回は全日本ベテランの決勝戦ということもあり、否応なしに「念願の初優勝」ということも同時に頭をよぎりました。
この「優勝」ということも含まれたポジティブな心理状態の変化が、この後のゲームの展開をより混沌とさせていきました。
キープして突き放したい第2ゲームのサービスゲームでしたが、ここでも決めるべきボレーミスなどがあり、ブレークされると、第3ゲームの相手のサービスゲームもキープを許し、1-2となりました。
この2ゲームが一時的に意気消沈していたように見えた弓田選手をカムバックさせ、第4ゲームの私のサービスゲームではより圧力をかけて攻撃を仕掛けてきました。
ここでは、ゲーム展開でも、心理的にも私の「守備」、弓田選手の「攻撃」という構図の中でゲームが進んでいき、私としては非常に苦しい状況でした。
そのような第4ゲームも弓田選手のランニングパッシングショットなどでブレークポイントを取られると最後は弓田選手のストロークエースでブレークされ1-3となり完全に形勢を逆転されました。
このわずか3ゲーム前までは、「優勝」ということも頭に浮かぶほど、心理的にポジティブで余裕もありましたが、この時は「優勝」という文字は完全に頭から消滅し、土俵際に追い込まれた心理状態でした。
ただ、この土俵際に追い込まれた心理状態が過度にネガティブになることなく、もう一度目の前のポイントに集中する機会となったことも事実でした。そして冷静に連取された3ゲームを振り返りました。
この3ゲームは全てファーストポイントを失って、ポイントを追いかける形でゲームが進行していたので、とにかく「ファーストポイントを取ってリードしていく展開を作ろう」と考えリターンのポジションにつきました。
第2セットとは全く逆の状況での3-1というお互いにとっての要のゲームで、考えていた通り、ファーストポイントを取り、そのあとの2ポイントも連取し、早速0―40とブレークバックのチャンスを掴みました。
要のゲームで譲れないのは弓田選手も同じで、そこから2ポイントを返され、30―40となりました。ここで、ブレークしきれず1-4となってしまうとセカンドセットと全く逆の状況となり、そのまま押し切られる可能性もありましたので、私としては何としても取りたいポイントでした。
緊張感のある長いラリーが続きましたが、弓田選手の少し浅くなったボールをバックへアプローチショットを放ち、ネットに詰めてストレートへバックボレーを決め切りブレークに成功しました。
この要の第5ゲームをブレークしたことで、2-3となり、1ゲームはリードされているものの、サービスキープ上はイーブンで、ここからいけるというポジティブな精神状態に変わったのか分かりました。
ただ、ポジティブな精神状態といっても、第1ゲーム目を取った後の「優勝」を少し意識し始めた時とは違い、あくまでも目の前のポイントにしっかり集中している精神状態であったので、心の隙はありませんでした。
第6ゲームのサービスゲーム、第7ゲームのリターンゲームもその隙の無い精神状態で、理想的な展開で連取し、この試合で再びリードを奪い、ワンブレークアップの状態で第8ゲームのサービスゲームを迎えることになりました。
ただ、ここでまた勝負の綾がやってきました。ファイナルセット中盤から足の痛みで動きが悪くなってきていた弓田選手がメディカルタイムアウトを取って、治療時間を含め約10分間の「間」ができてしまいました。
メディカルタイムアウトは選手に認められている権利で、弓田選手の足の状態は見た目からも傷んでいるように見えましたので、彼が意図的に流れを変えるために、策略的に取ったものではなかったことは明確でしたが、いい流れでゲームを進めていた私にとっては、嫌な「間」であったことは間違いありませんでした。
ここで、座って相手の治療が終わるのを待っていれば、また「優勝」という雑念が頭をよぎり、掴んでいた流れを手放しかねないと考え、治療中もベンチには座らず、コートに移動し、素振りをしながら、次のポイントのイメージを繰り返し行いました。
「とにかく目の前の今できることに集中しよう。」呪文のように呟きながら、集中力を切らさないように、相手の治療を終えるのを待ちました。
相手の治療が終わり、私のサーブからゲームが再開されました。1-3から3ゲーム連取していた全てのゲームでファーストポイントを取っていましたので、ここでもファーストポイントを確実に取りに行くべく、集中してサーブを打ちました。
ファーストサーブはフォルトし、深く入った(ように見えた)セカンドサーブに弓田選手のリターンがベースラインを超え、1本目を取ったと思った瞬間、主審から「フォルト! 0-15」とオーバーコールがありました。
「相手選手もインと認めている(少なくとも私にはそう見えました)ショットをSCUの主審がオーバーコールできるのか?しかもこんな大切なポイントで!」と思いましたが、審判に意見し、流れを自ら手放すことだけはしたくありませんでしたので、次のポイントに気持ちを切り替えることに集中しました。
嫌な形で1本目を落としましたが、上手く気持ちを切り替えられたことで、そのあとの4ポイントを連続で取って、5-3とし、チャンピオンシップゲームとなりました。
勝利まであと1ゲームとなったことで再び頭によぎる「優勝」という雑念。このゲームは自分の雑念との勝負でもありました。「まだ自分は何も成し遂げていない。とにかく目の前のことに集中する。」それだけを考えてリターンポジションにつきました。
最初の2ポイントを連取し、そのあと1ポイントを取られ15-30となりました。4ポイント目はぎりぎりで追いついたボレーを決めて15―40となり、チャンピオンシップポイントを迎えました。
念願の初優勝まであと1ポイントとなり、自分の感情が吹き出しそうになりましたが、気持ちを落ち着けるためにしっかり間を取ってリターンポジションにつきました。
1ポイント目のチャンピオンシップポイントは相手のセンターのナイスサーブからクロスにエースを決められ30―40となりましたが、次で取れるような気がしていました。
2本目のチャンピオンシップポイントでは、逆クロスのラリーからストレートにアプローチショットを放ち、相手のバックのスライスをストレートにバックボレー、相手が何とか追いついたネット前に上がったチャンスボールをしっかり前に詰めてフォアボレーで決め切りました。
「よーし!!」この試合で一番の雄たけびを上げ、3時間を超えるロングマッチに終止符を打つとともに、念願の全日本ベテラン初優勝を決めました。
「ゲームセットアンドウォンバイマッチオオサキ・・」主審が試合終了のコールを告げた瞬間、全日本ベテランで味わった悔しかった2年間の思いが一気に噴き出し、涙が流れ落ちました。3度目の挑戦でやっと掴んだ優勝。間違いなく人生で最高の瞬間でした。
〇試合を終えて
試合終了後、表彰式がメインドローの掲示されている本部前で行われました。そこで優勝盾や副賞の贈呈や優勝スピーチを行いましたが、表彰台からの見える景色は本当に最高でした。
全日本ベテランの3年間は、自分に負けて相手にも負けた1年目、自分に勝って相手に負けた2年目、そして自分に勝って相手にも勝った3年目。少しずつ一歩一歩階段を上ってきた3年間だったと思います。
自分に試練を与え成長させてくれた「全日本ベテラン」、今日の決勝戦の対戦相手である弓田選手をはじめ、切磋琢磨してきたテニス仲間たち、大会参加に際して理解し、快く送り出してくれた職場の方々そしていつも自分を支え、応援してくれている妻や子供たち・・。本当に全ての皆さんに心からの感謝を送りたいと思います。
「本当にありがとうございました!これからもよろしくお願いします!」
最後までご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします!
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